先達詩人の短詩作品

    折々に更新します

     * ふさわしい作品をご教示ください

 

    

◇ 北園克衛

 

驟雨

 

友よ またアポロが沖の方から走ってくる

雨のハアプを光らせて

貝殻のなかに夕焼けが留まる

 

 

 

◇ 丸山 薫

 

黄昏

 

河は白く──白い花を一輪、胸に灯してゐる。

 

 

 

◇ 西脇順三郎

 

天気

 

(くつがへ)された宝石)のやうな朝

何人か戸口にて誰かとさゝやく

それは神の生誕の日

 

 

 

◇ 萩原朔太郎

 

静物

 

静物のこころは怒り

そのうはべは哀しむ

この器物(うつは)の白き()にうつる

窓ぎはのみどりはつめたし。

 

 

 

◇ 八木重吉

 

ひびいてゆかう

 

おほぞらを

     びんびんと ひびいてゆかう

 

 

 

◇ 草野心平

 

冬眠

 

     ●

 

 

 

◇ 萩原朔太郎

 

静物

 

     静物のこころは怒り

     そのうはべは哀しむ

     この器物(うつは)の白き()にうつる

     窓ぎはのみどりはつめたし

     

 

 

◇ 佐藤春夫

 

カリグラム

 

尋ね人新聞広告文案

 

こぞ   いま

雪     (春)

の    いづこ

 

 

 

 

◇ 堀口大學

 

砂の枕

 

砂の枕はくづれ易い

少女(をとめ)よ お行儀よくしませう

沢山な星が見てゐますれば

あらはな膝をかくしませう

 

 

 

◇ 稲垣足穂

 

黒猫のしっぽを切った話

 

ある晩 黒猫をつかまえて鋏でしっぽを切るとパチン! と黄いろい

煙になってしまった 頭の上でキャッ! という声がした 窓をあけ

ると 尾のないホーキ星が逃げて行くのが見えた 

 

 

 

◇ 山田 孝

 

 

     とぐろの中で、蛇は、瀟洒(ショウシャ)なステッキのように直立して

    いる自分を空想している。

 

 

 

◇ 北川冬彦

 

 

軍港を内臓してゐる。

 

 

 

◇ 山村暮鳥

 

 

丘の上で

としよりと

こどもと

うっとりと雲を

ながめてゐる

 

 

 

◇ 荻原朔太郎

 

椅子

 

椅子の下にねむれるひとは、

おほいなる(いへ)をつくれるひとの子供らか。

 

 

 

          ◇ 高村光太郎

 

        現実

 

     感激の枝葉を刈れ

    感動の根をおさへろ

 

 

           

◇ 北原白秋

 

      薔薇二曲・一

 

    薔薇ノ木ニ

     薔薇ノ花サク。

 

ナニゴトノ不思議ナケレド。

     

 

 

◇ 尾形亀之助

     

      昼

 

太陽には魚のやうにまぶたがない

 

 

    ◇ 宮崎又二

 

  美しい川

 

美しい川が流れてゐる

地の根を洗ひ清めるやうに 

 

 

 

◇ 百田宗治

 

     帰り花

 

   冬日(ふゆび)のなかの帰り花のやうに、

   妻よお前はみごもったのだ。

 

 

 

◇ 山村暮鳥

 

烙印

      

    あをぞらに

     銀魚をはなち

    にくしんに

    薔薇を植ゑ

 

 

 

◇ 八木重吉

 

草に すわる

 

わたしのまちがいだった

わたしの まちがいだった

こうして 草にすわれば それがわかる

 

 

 

◇ 宮澤賢治

 

       報告

 

    さつき火事だとさわぎましたのは虹でございました

もう一時間もつづいてりんと張って居ります

 

 

 

◇ 三好達治

 

       

 

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

 

 

 

◇ ジュール・ルナール(岸田国士訳)

 

長すぎる。

 

二つ折りの恋文が、花の番地を捜している。

 

 

 

      ◇ ジャン・コクトー(堀口大学訳)

 

 

私の耳は貝の殻

海の響きをなつかしむ

 

 

 

 

◇ 荻原井泉水

 

雀二羽で鳴く三羽で鳴くひとりで鳴く

 

 

月光しみじみこほろぎを抱くなり

 

 

空を歩む朗々と月ひとり

 

 

 

◇ 尾崎放哉

 

    こんな大きな石塔の下で死んでいる

 

 

わがからだ焚火にうらおもてあぶる

 

 

入れものが無い両手で受ける

 

 

 

◇ 種田山頭火

 

分け入っても分け入っても青い山

 

 

終電車重い響を残して帰った

 

 

ともかくも生かされている雑草の中

 

 

 

◇ 安西冬衛

 

 

てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った

 

 

 

◇ 高橋新吉

 

るす

 

留守と言え

ここには誰も居ないと言え

五億年経ったら帰って来る

 

 

 

◇ 千家元麿

 

    

 

河は遊んでいるやうに流れてゐる春 

 

 

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